丈夫なお寺づくり

耐久性と維持保全

北一タカハシ建設はお寺の新築だけでなく、修繕などの維持保全、増築や建て替えなども行っています。ここ数年の実績ではこれらのお仕事を担当させていただきました。

平成28年度

写真:日蓮宗経王寺

日蓮宗経王寺 本堂大規模修繕工事(札幌市)

写真:曹洞宗松源寺

曹洞宗松源寺 庫裏建替え工事(青森県)

  • 真言宗豊山派 長高寺 客殿建替え工事(岩見沢市)
  • 浄土真宗静福寺 納骨堂 須弥壇・内佛工事(鷹栖町)
  • 日蓮宗妙法寺 小屋裏増築工事 (三笠市)
  • 真宗出雲寺派本光寺 庫裏外装・内装改築工事 (旭川市)
  • 曹洞宗大聖寺 地下改修工事(栗山町)
  • 浄土真宗本願寺派真宗寺 屋根他改修(札幌市)

平成29年度

  • 静福寺鐘楼堂 修繕工事(鷹栖町)
  • 曹洞宗最乗寺 本堂大規模改修工事(網走市)
  • 千歳神社手洗舎 新築工事(千歳市)

多くのお仕事が既存のお寺の修繕や増改築です。建て替えを行うケースも少なくありませんが、その場合も、歴史ある伝統建築物を安易に解体するのではなく、基礎や柱梁、屋根、壁などの劣化を診断し、性能、意匠面や設備、コストなどさまざまな点を検討した上で、費用対効果の高い選択肢をご提案させていただきたいと考えております。

そこで問題になるのが、丈夫で強いお寺を作り、維持改修コストを抑えること、そしてお寺の劣化を踏まえた適切なメンテナンス、増改築などの賢い方法です。

屋根の劣化は要注意

お寺や神社が築30年、50年と経過する中で、どの部分が先に劣化し、修繕が必要になってくるか、部位別に検討していきます。

近くで観察しないのでなかなか気づかない部分ですが、屋根の劣化は最も注意が必要です。屋根は雨風や積雪、紫外線などの影響をはじめ、温度変化が屋根材に与える悪影響も大きい部位です。

写真:瓦屋根のお寺

西日本のお寺、神社の屋根は伝統と風格がある瓦の採用が主流です。

写真:銅板屋根のお寺

東日本は銅板屋根が主流です。

写真:茅葺き屋根のお寺

他にも茅葺き、チタンなどもあります。

銅板屋根のメリットとデメリット

加工性や耐食性が良く、軽量でコストも比較的安い、年数を経ると緑青色に変化することが人気の銅板屋根の魅力です。北海道内のお寺や神社でも屋根材として主流になっています。北海道では瓦を施工できる職人が極めて少ないのも銅板屋根が多い要因になっています。

ただし銅板屋根を北海道で採用する場合には注意も必要です。銅板は高温で膨張し低温下では収縮する性質があります。屋根に施工された銅板は、日射をもろに受けるとプラス70℃くらいまで上昇するので大きく膨張、逆に夜間や冬には低温になって収縮します。100℃を超える温度差で膨張収縮を繰り返すと野地板が雨水に直接あたり、濡れて腐るリスクが高まります。放置すると屋根に穴が開くなど大きな問題が発生します。

銅板は数年で表面に錆が発生し、その結果「緑青(りょくしょう)」と呼ばれる美しい色味になることも人気ですが、北海道では冬季の積雪により緑青が綺麗に出ないのが残念なところです。また、より安価なトタン屋根を採用するケースもありますが、30年持たずに張り替えが必要になる点が悩ましい点です。

銅板屋根を採用する場合は、こうしたメリットとデメリットを両方理解し、適切なメンテナンスが欠かせません。

おすすめは寒さに強い石州瓦!

一方、北一タカハシ建設は瓦屋根、特に日本三大瓦産地の一つ、島根県石見地方の石州瓦をおすすめしています。

写真:石州瓦

北一タカハシ建設は、社内の宮大工を島根まで研修に派遣し、国家資格の瓦技能士を養成。自社の社員が瓦施工を行える体制を作り、石州瓦の北海道代理店になるほど力を入れています。

瓦は日本の気候風土の中で100年以上も持つ耐久性の高さ、メンテナンスが最小限で良い、重厚感や陶器ならではの美しさなど多くの良さがあります。

銅板やトタンなど他の屋根材に比べると材料費は高くなりますが、耐久性が数倍、そして風格、美しさなどを踏まえると大変魅力的な屋根材です。

そして瓦の中でも石州瓦は400年の歴史の中で特に「凍害に強い」という評価で全国に普及した瓦です。北海道へも北前船によって運ばれ、小樽や松前、江差などの港から道内各地で採用されてきた歴史があります。

その秘密の一つは粘土を焼いて作る時の温度にあります。

レンガ 800~900℃
素焼き 800~1100℃
他産地の瓦 1000~1100℃
石州瓦 1300℃

一般的にセラミック製品は、焼成温度が高いほど品質がアップすると言われます。北海道で製造され広く普及したレンガでも、1000℃もの高温では焼けません。石州瓦の優位性を支えるのがこの焼成温度にあります。

素材が吸水してしまうと、凍結で膨張し劣化の原因になります。しかし陶器と同じく瓦はほとんど給水しません。特に石州瓦は陶器瓦の中でも最も低い吸水率4.88%を誇ります。また厳しい凍結試験、凍結融解試験もクリアするなど雨や寒さ、雪に強いこと、瓦の形状と施工法の工夫で台風銀座とも呼ばれる九州で数多く採用されるほど風に強いこと、割れにくいこと、阪神・淡路大震災クラス(M7.2)の揺れで検証した実証実験でも崩れない耐震性など、北海道に適した性質を数多く持っています。

先日改修工事をさせていただいたお寺では、トタン屋根が約30年経過して腐食が進み張り替えが必要でした。相談の上で石州瓦を採用させていただきました。想像されていたより価格が安かったことも採用いただいた理由でした。

写真:屋根の上の飾り

北海道・東北で腕の良い宮大工、そして風格ある瓦屋根を採用したい場合には、社内に宮大工、瓦職人を雇用し品質とコスト両面で他社を上回る提案が可能な北一タカハシ建設にぜひご相談ください。

合板が腐るケースは環境の改善を

多くの方が木材が腐ったりカビたりした状態を見たことがあると思います。実際、お寺でも同様のケースはあります。

具体的には、床下の換気が悪いなどの事情で床板が腐ってミシミシ音がするケース、雨漏りやすがもり、結露などで侵入した水が木材を腐らせたりカビが生えるなど、主に壁や床に施工された木材(合板など)を腐らせるケースです。洗面台やトイレなど水回りで木材が濡れやすい状態にある場合も木材は腐ることがあります。

この場合は、木材(合板)などを腐らせる原因となった水や水蒸気の侵入を食い止める根本解決をしなければ、いくら木材(合板)を張り替えてもまた同じ問題が繰り返されます。

柱・梁などの木材はかなり丈夫

その一方で、自然乾燥させたケヤキやヒノキなどの丸太を柱や梁に利用し、腕の良い宮大工が丁寧に施工した場合は、木材が腐るなどといった劣化はほとんどありません。

写真:お寺の内装

日本の大規模木造建築、法隆寺などが1,000年以上も美しい姿と機能を保っている、最大の要因は、木材の耐久力と宮大工の腕にあります。

写真:お寺の梁飾り

鉄やコンクリートは新しい時が一番強く、100年も持たせるのは非常に困難な素材ですが、木材は、伐採し、自然乾燥した後、例えばヒノキであれば400年後くらいには、伐採時よりも強度が高く、その後強度は徐々に低下するものの、1,000年経過したころにやっと伐採時の強度に戻ります。

写真:お寺の欄間

木材は建築時やメンテナンスの際に、腐食やカビ、白アリなどの食害などへの配慮がされれば、木の種類によっても違いはありますが数百年の耐久性があるのです。また、木材は調質作用があり、断熱性能もあり、優しい質感や香りなども備えている優れた素材です。

写真:お寺の床

外壁・基礎には注意が必要

外壁も屋根と同じく風雪や紫外線によるダメージを受けやすい場所です。サイディングなど新建材が丈夫だと思われがちですが、木板張りも良い選択肢です。

写真:お寺の木板張りの外壁

木板に水を弾き、防腐効果も高い塗料を施工するとそう簡単には劣化しない外装材になります。もちろん塗り壁などそのほかの外装材も選択可能です。

基礎は注意が必要です。古い建物だと基礎に鉄筋が入っていない、いわゆる「無筋」の基礎が施工されている場合があります。診断のために床をはがしてみると基礎が割れたり砕けている場合もあります。その場合は、基礎工事をやり直す以外にも、新たに強力な基礎を追加したり、現状の基礎にアラミド繊維を貼るといった補強工事を行う選択肢もあります。

デザインのリニューアルや減築も可能

写真:日蓮宗経王寺:外観

お寺の修繕や増改築は、建物の性能や品質の改善などにとどまりません。本堂外観の風格や存在感、室内の彫刻なども宮大工の腕の見せ所です。

スロープや手すりなどのバリアフリー設計、外構や庭の植栽なども含めたデザイン、そしてお寺の規模を小さくし、予算を抑えながらも品格ある佇まいを維持する減築のアイデアなどもあります。

写真:日蓮宗経王寺:玄関

また、長期的な修繕計画に基づいて、緊急度・重要度の高い部分から段階的に修繕を行うことも可能です。

北一タカハシ建設はこれまでに80棟以上の神社仏閣の新築、修繕、改築の経験があります。ご連絡をいただければまず、現在のお寺の状態の診断、そして維持保全や改修のご提案をさせていただきます。自社設計提案、あるいは設計事務所との連携も可能です。

写真:寺院の天井画

実際に工事がスタートすると新築工事であれば3年以上、増改築などでも1年以上の期間を要することも多く、冬期間(12月から4月まで)は北一タカハシ建設の加工場で、宮大工が柱梁の加工、造作や建具の彫刻や細工を行い、5月から11月までは宮大工が現場に出張し現地で作業を行います。

北一タカハシ建設は腕の良い宮大工を通年雇用し、基礎、仮設、断熱、瓦などの工事も自社の宮大工が責任をもって担当させていただきます。